つき

あるいても、あるいても。

 

姿を変えながら、ずっと見守ってくれていた。

 

心に雨が降って土砂降りの涙を流した夜も

誰かを思ってそっとため息をついたあの日も。

 

少し遠い場所から、いつも優しく照らしてくれた。

笑ったり泣いたり、時には目を細めてはにかみながら。

 

下を向いてばかりいた私に、

変わらない愛をくれたあなたに。

 

今日からは少しだけ上を向いて、

冬の夜空に向かって一歩、歩き出そう。

あした

明日の私に、伝えてください。

 

「大丈夫、きっとうまくいくよ。」

 

今日がどんなに辛くても

世界中で自分だけが独りぼっちになってしまっても。

明日のに元気でいてほしいから。

 

今日のは、明日のに希望をつなぐ。

 

明日のは、まだ見たことのない、未来の

想像もできない出来事が待っているかもしれないから

 

昨日のは、今日の

明日の私は、明後日の私へ。

ひとつひとつ、言葉を紡いでいく。

 

未来の私がたくさんの「大丈夫」を育てられますように。

こぶたの夢

小さな子は夢を見ます。

昨日のことや、今日のこと。

それに、

いろんな人に出会います。

 

は、夢の中ではいつも一人の少女でした。

 

毎日、誰かを見つめています。

いろんな人が少女に話しかけますが

彼女の視線はいつも、たった一人に向けられていました。

 

には、それが誰だかはわかりませんでした。

なぜ、彼女がその人を見つめているのかも。

 

月明かりが寝藁を優しく包む小屋の中、

今日も夢の中で少女は、誰かを見つめていました。

は心地よい眠りの中で思います。

「なんでだろう」

 

お父さん豚に聞いても

お母さんに聞いても

首をかしげるばかり。

 

蛙に聞いても

家鴨に聞いても

みんな、それがなぜだかわかりません。

 

少女はいつも誰かを見つめていて、

けれども話しかけることはしないのです。

悲しい気持ちと嬉しい気持ち、

少女の中には二つの気持ちがありました。

 

子豚は、その気持ちが一体何なのか、知りたいと思いました。

「私が人間になれば、わかるかもしれない。」

 

それでも、子豚は人間にはなれません。

どんなに願っても

どんなに夢見ても。

 

恋を知らない小さな子豚は

今日も恋する夢を見ます。