こぶたの夢

小さな子は夢を見ます。

昨日のことや、今日のこと。

それに、

いろんな人に出会います。

 

は、夢の中ではいつも一人の少女でした。

 

毎日、誰かを見つめています。

いろんな人が少女に話しかけますが

彼女の視線はいつも、たった一人に向けられていました。

 

には、それが誰だかはわかりませんでした。

なぜ、彼女がその人を見つめているのかも。

 

月明かりが寝藁を優しく包む小屋の中、

今日も夢の中で少女は、誰かを見つめていました。

は心地よい眠りの中で思います。

「なんでだろう」

 

お父さん豚に聞いても

お母さんに聞いても

首をかしげるばかり。

 

蛙に聞いても

家鴨に聞いても

みんな、それがなぜだかわかりません。

 

少女はいつも誰かを見つめていて、

けれども話しかけることはしないのです。

悲しい気持ちと嬉しい気持ち、

少女の中には二つの気持ちがありました。

 

子豚は、その気持ちが一体何なのか、知りたいと思いました。

「私が人間になれば、わかるかもしれない。」

 

それでも、子豚は人間にはなれません。

どんなに願っても

どんなに夢見ても。

 

恋を知らない小さな子豚は

今日も恋する夢を見ます。